Banana Fiber Research 〜番外編・ベトナムの亮布~

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はじめに・ Banana Fiber Research Projectとは

「東南アジアや南太平洋地域に伝わる芭蕉布文化について、現地調査を試みそのルーツを、また、すでに製作技術が忘れられ途絶えてしまった地域での復興や、存続している地域の人達との交流を通して芭蕉布の新たな可能性を探る」というプロジェクトです。
沖縄の染織工房バナナネシアの福島泰宏さんが主宰となり、その活動に現代美術家の遠藤 薫さん、染色作家の山中彩などが協力して、活動を進めています。
→プロジェクト概要はこちら

※文献をもとに、調査地選定を行っています。
各地域についてのレポートは、以下リンクからご覧ください。
調査済:台湾の蘭嶼島花蓮県ベトナム北部カオバン地域
計画中:中国福建・広東・広西チワン自治区・雲南省

ベトナムの 亮布(リャンプー)リサーチのを報告します

べトナムでの芭蕉布リサーチの際、 黒モン族の藍染の布「亮布(リャンプー)」を現地に見に行きました。
直接芭蕉布とは関係がありませんが、 リサーチの様子を 報告いたします。

プロジェクト主催の福島さん
芭蕉の繊維

ベトナム・サパ

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サパはフランス統治下、1880年代からフランス人の避暑地として栄え、近隣の少数民族(ザオ族、各モン族、タイ族など)の交易の場になりました。標高1.600mの美しい棚田が広がる地域で、トレッキングを目的とした観光地化が進んでいます。街の中心部はフレンチ様式の建築に多くの外国人観光客で賑わっていました。街で見かけた少数民族の方々は、それぞれ繊維の材料から染料、文様に違いがあり、一目で見分けがつけられるほどです。言語もそれぞれ違っています。

案内人を探す

遠藤 薫さんは以前からサパを訪れ、少数民族の村で彼女達の麻織物や藍染を住み込みで教わり、彼らの織り機を制作していただいたり、家族をハノイへ招き交流を試みていました。
遠藤さんの友人の家では藍を育てるところから亮布を作っているそうで、今回はそちらにお邪魔させていただけることになりました。

1日目は町の中心部を観光し、遠藤さんの友人とは電話が繋がらなかったので、街で案内してくれる方を探すことに。
そこで出会った出稼ぎに来ている少数民族の女の子に声をかけ、近隣の亮布の布づくりをしている遠藤さんの友人の家に連れていってもらうことになりました。

中心部に近い各集落には必ず英語達者な人がいて、 英語で会話が可能です。彼らは、英語は全てツーリストからヒアリングで習得したそうです。今の子ども世代は小学校へ通って読み書きの英語も勉強しているそうですよ。

いざ出発

1日めは村を4つほど通過し、最後の村で宿泊をすることになりました。
サパは交易の町なので周辺はトレッキングをする観光客向けに開かれた村と、一般的な人々が暮らしている村がいくつもあります。 今回我々6人のメンバーが宿泊したのは観光客向けに食事も作ってくれるところでした。
(一人で宿泊する場合は民家に泊めてもらえる可能性は高いです。ぜひ現地で交渉して、彼らの暮らしぶりを共に過ごしてみてください。)

現地の食事を頂いた後にHappy waterと呼ばれる焼酎を飲みました。この焼酎はトウモロコシで作られているもので、各集落ごとに自作で蒸留しているようです。味は泡盛に似ています。実はこの飲み物が藍を建てるのに必要不可欠だと、後ほど知ることになります。

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あいにくの雨と霧の中を歩き続ける
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山間部に点在する村には観光客向けの品々が並ぶ
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観光客が来た際に、織る様子を見せてくれる村人。

二日目 これが亮布です

さて、二日目は遠藤薫さんが以前からお世話になっていたという村人のところへ。
家には藍甕もあり、我々はそこでついに亮布の制作過程を見ることができました。 (2018年は糸づくりの機材も揃っていたそうですが、現在はなくなってしまったそうです。)
刺繍などは女性たちが家畜や稲作農業、家事の合間に刺繍に励みます。集落の中で、染め、織り、鋳造、大工など、分業している様子でした。

軒先に干される藍染の布

布の研磨

足で石を左右に動かし、繊維の目を潰していきます。私たちも体験させていただきましたが、簡単そうに見えて難しいです。ここはほとんど中国国境であり、高地のために冬は雪が降ることもあります。今回お世話になった黒モン族は中国圏から南下した民族と考えられているので、中国の亮布の技術と酷似していることも頷けます。 

麻の織物は防寒性が低いので、織り目を潰すことで風を通さない必要があったのではないかと考えられます。また、その布の上から刺繍も施します。日本の東北でも防寒のために麻の生地に刺繍をすることもありますが、布を強くするなど実用的な側面はもちろん、そこには生活の彩りや願いが育まれています。

藍染めした布に蜜蝋を塗り、石で研磨して光沢を出す

ベトナム村の布の研磨

サパの藍は琉球藍とほとんど一緒だと見受けられ、民家の周りにも自生していました。

現在、藍を建てる際の石灰石はサパよりも北部にあるラオカイから運んで来るそうです。
また、甕にライムを絞り入れたり、Happy waterも投入されるそうです。Happy waterは、昨日の村でいただいたトウモロコシでできた 焼酎のことで、 ここで繋がるのか!と興奮しました。沖縄では藍の餌に黒糖や泡盛、時にハチミツを加えるそうで、一見関係ないものが必要というのは面白いですね。

サパの藍建て方法の中でも特殊だと感じたのは、周辺に生えているドンと呼ばれる広葉樹の葉を束にして藍甕に入れて藍を元気にすることです。遠藤さん曰く、沖縄ではユウナの木の下に甕を置くと元気な藍になると言われているそうです。そもそも染織はそこにあるもので育まれてきた文化。すでにそこにある自然環境がもたらす相互作用に感心してしまいました。

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周辺に生えているドンと呼ばれる広葉樹

刺繍に加えて、ミツロウを用いた藍のろうけつ染で細やかな文様を施すのも黒モン族の特徴。
筆者がサパで購入した黒モン族の藍のろうけつ染布(写真下)民族衣装の襟に当たる部分の刺繍布(写真上)

中国の亮布の制作動画

筆者の友人で、中国・貴州の亮布を追いかけている山田 華緒李さんという方が います。彼女に我々がベトナムで見た亮布の話をしたところ、貴州にリサーチに訪れた際に見たという亮布の制作動画をシェアしてくれました。

貴州での亮布製作は、機械で叩いて効率的に行われている様子。

貴州亮布製作工程 / 機械で連打する
貴州の亮布(山田さん提供)

藍染をした布に豚の血を塗布する様子

貴州亮布製造工程 / 豚の血を塗布する

遠藤さん曰く、中国の亮布のように、沖縄でも芭蕉の船の帆に豚の血(血しょう)を塗り、通気性を下げて風を受けやすいようにしたと言い伝えられているそうです。知らなかった…!中国、アジア圏で共有されていた技術なのでしょうか。確かに防水効果も望めそうですが、重さや匂いが気になります!

血だけではなくて、 卵白を塗布する場面

貴州亮布製造工程 / 卵白を塗布する

山田さんは実は山中の大学部時代の後輩で、当時は一緒にジャンベなどを叩いていた仲なのですが、彼女はいつの間にかすっかり「リャンプーの人」になっていました。ReASIAの活動にも初期から参加してくれていて、秋ごろには月に一回開催されるReASIAのオンライントークイベント・ノンクロンにてリャンプーに関するお話をしていただく予定です。

そんな山田さんのリャンプーに関する活動はこちらのリンクにわかりやすくまとめれていますので、みなさまぜひチェックしてみてください!

苗族の伝統布「亮布(リャンプー)」を日本に広め苗族文化を守りたい! クラウドファンディング

まとめ

遠藤さんが以前宿泊していた織り機のある民家は、土の床ではなくコンクリートに変わり、観光業のために新しい施設を作っていたことを前回訪れた際にも確認したそう。日々とても早いスピードで観光化が進み、在りし日の生活様式が失われていることを肌で感じているそうです。

私は合成染料を用いて作品作りをしています。そのため天然染料については、基本的な知識だけはあるものの、旅先で各地の染織を見てもいまいちよくわからないことも多かったです。
「村に昔から伝わる染めも現在では合成染料に代替され・・・ 」という話や現場を見る度に、何とも複雑な気持ちになっていました。 しかも実際に現地で見るものは、明らかに化学染料で染められた鮮やかなものよりも天然の土地のもので染められた代物の方が美しく味わいがあるのです。

この旅を行なったのが2019年の9月のこと。現在2020年の7月段階で、私の制作は柿渋染めやクール、ウコンなどの天然染料を用いての制作が自分の中の一部となりつつあります。それと同時に、化学染料を用いての刷毛染めや手捺染などの制作も継続して行なっています。

媒染剤に用いられる金属分子や、長時間加熱することによる燃料の消費などの問題から、天然染料を用いることが必ずしも環境に良いわけではないことは周知の事実です。
日中、太陽のもとで柿渋で染めた布を干すときや、ウコンを煮詰めながら隣でごはんの準備をする時は、室内でマスクをしながら合成染料の調合をする時とはまた違う、日々の生活により近い制作のあり方を考えることができます。
どちらも異なる面白さがあると思っていて、どちらかが優れていると言える問題ではないと思っています。

それでも、自分の考え方を広げてくれたベトナムの布の素晴らしさに、本来の布作り、染める行為とはこういうものなのだと、リスペクトを感じ続けていたいと思いました。

文・山中彩
協力・ 遠藤 薫 、 山田 華緒李
校正・ReASIA

今回の記事の執筆にあたり遠藤さん、そして 山田 華緒李さんに協力いただきました。
山田さんは2015年からリャンプーに魅了され、はや5年ずっとこの布を追いかけ続けている人です。旅の途中でこのやりとりをしていて、今回の記事を書くにあたり改めて連絡をしたところ、こんな動画もあります!と次々出してきてくれました。 ありがとうございます。

山田 華緒李 https://www.instagram.com/komme.y/?hl=ja
染織工房バナナネシア http://banananesia.official.jp/
遠藤 薫 https://www.kaori-endo.com
山中彩 https://aya-yamanaka.com

福島泰宏
埼玉県出身。’85年沖縄県大宜味村に移り住み、平良敏子芭蕉布工房などで技術を学ぶ。糸芭蕉の栽培から織りまでの全行程を手がける。
染織工房バナナネシアの歩み
1985年  芭蕉布後継者育成事業を経て、沖縄県大宜味村で平良敏子芭蕉布工房で製造技術を学ぶ。
1992年 読谷村で工房を立ち上げ独立し芭蕉布の製作をはじめる。
2001年 芭蕉紙の製造を始める。
2014年 沖縄県今帰仁村字謝名に工房を移転。
糸芭蕉の栽培から、繊維の採取、糸紡ぎ、 染織、織りの全行程を、沖縄の伝統的な芭蕉布製造技法を基に生産中。
http://banananesia.official.jp/index.html

1994年生まれ。新潟県出身。2018年金沢美術工芸大学芸術学専攻卒業。大学在学中に中国の少数民族・ミャオ族の染織文化と出会い、以来貴州省に足を運ぶようになる。古き良きモノを好み、またリャンプーマニアとしてのんびり活動している。2020年9月からは、地域おこし協力隊員として新潟県の小さな集落で活動中。
Instagram:@komme.y
過去の活動はこちら▼
https://faavo.jp/kanazawa/project/3495

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山中彩

山中彩
染色作家 .  工芸/染色作品の制作を通して、現代の日常の暮らしの中に息づくものづくりのあり方を考えている。韓国と日本にルーツを持ち、現在は台湾で暮らしている。アジア各地へ旅をする中で、土地の環境と文化に由来する染料や技法に興味を持つようになる。ReASIAを通しては、芭蕉布に関するプロジェクトや天然染料のリサーチ記事を執筆する。2017年金沢美術工芸大学工芸科染織専攻卒業。
国立台南芸術大学応用芸術学科繊維専攻に在籍中。京都府出身。

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